買っちゃったReport
最終更新日 2011年10月12日 (コトあるごとに更新中)
購入したものを素直にレポートするシリーズ。
PETZLのヘッドランプ、TIKKA XP2と、そのリチウムイオンバッテリー、COREです。
小型軽量のLEDヘッドランプとして人気の高いPETZL社の製品、自分もLEDヘッドランプの草分けとも言えるTIKKAからPETZLを愛用してきました。その後TIKKA XPに買い替えましたが、先日久しぶりに真っ暗な森を歩いてみて、TIKKA XPのブーストモードの明るさが常時あればいいのに…そう思いました。そこで購入。XP2です。果たして買い替える価値はあるのか。新しく発売されたリチウムイオンバッテリーのオプションであるCOREも含めて、いろいろ確認してみました。
デザインとしてはTIKKA XPよりも初代TIKKAに近い雰囲気。XPにあったブーストモードは廃止され、ボタンはひとつに。そのためボタンはXPよりも大きくなって押しやすくなり、同時に「押し間違い」も無くなりました。厚めの手袋をしたままでも押しやすいのではないかと思います。
明るさは2段階。XPの3段階から減りました。点滅モードはXP同様に搭載していますが、点滅のデュティー比がかなり変わってます。XPは点灯と点滅の時間がほぼ同じ時間でしたが、XP2では点灯時間の比率が小さくなりました。点滅モードでは「相手が気付く」という事が重要ですから、これによって消費電力を下げ、より長時間使えるようにしているのでしょう。ちなみに点滅の周期はXPより速くなり、より目立ちやすくなっています。
XPと同様、光を拡散させるフィルターも搭載。これ便利です。
ちょっと気になったのが、光の色。超高輝度白色LEDでは青みがかった光のものがあります。XPではその青みはほとんど感じられない綺麗な白色でしたが、XP2では若干の青みが感じられます。まぁ、しばらくこの光を見ていれば慣れると思うので大きな問題にはならないでしょうけど、この光を写真撮影の補助光として利用する場合は影響あるかもしれません。 XPに無かった機能として赤色LEDがあります。暗めの照明として使えないことも無いですが、主な用途は緊急用でしょう。ちなみに白色と赤を同時に点灯することはできません。
投射角度はXPが10段階でしたがXP2では5段階、特に上方の範囲が狭くなりました。頭に装着した状態では全く問題ありませんが、首にかけるともう少し上方を照らせてほしといます。首にかける時は上下逆にするといいでしょう。
重さは、バッテリー無しでXPが59g、XP2が53g(実測)で、多少でも軽くなってます。ちなみに初代TIKKAは37gでした。
照明とは直接関係ありませんが、バンドのパーツがホイッスルになってます。簡単な仕組みではあるものの、下手なホイッスルに比べればカスレの少ない明瞭な音が出ました。
最も気になるのが明るさと、電池の持ちでしょう。
ということで、XPとXP2とで、明るさと消費電流を計測してみました。
条件として、ほぼ新品のアルカリ乾電池を使用、拡散フィルターを使用し、30センチ離れた点での最大の明るさを測ってみました。なお、同じ電池を使い回して計測しているので、消費しつつ計測しており、厳密に言えば同一条件ではありません。あくまでもおおまかな目安として参考にしてください。
MODE | 消費電流 | 明るさ |
---|---|---|
XP2 MAX | 135mA | 720lx |
XP2 Eco | 18mA | 100lx |
XP Boost | 160mA | 560lx |
XP High | 99mA | 220lx |
XP Mid | 71mA | 131lx |
XP Low | 34mA | 59lx |
XP2がXPより明るい事は明確でしょう。XPもXP2も電源の安定化はされていないので時間と共に明るさは落ちます。それでもXP2のMAXモードであれば、XPのBoostモードと同等の明るさでありながら消費電流は抑えられてます。XP2でBoostモードは廃止されたわけですが、これは常時Boostモード並みの明るさが使えるようになった、という事でしょう。
ちなみに、実測データはありませんが、拡散フィルターを使用しない時の光の拡散性はXP2のほうが高いようです(逆に言えば、集光性はXPのほうが高い)。
測定しながら気になった点のとして、XP2のEcoモード時の光があります。これは光そのものを暗くしているのではなく、高速に点滅させることで全体的な光量を落としています。このため動きのある物を照らすとストロボスコープで照らしたようにバラバラに見えてしまいます。
XTIKKA XP2 ECOモードで照らしながら撮影。シャッタスピード1/10 |
他のメーカーの商品でも最近ではこのような動作のものがあるようですので、これが気になるという事であれば、購入時に確認してみるべきでしょう。
ただ、この方式は電源の使用効率が良いのがメリット。Ecoモード時の非常に少ない消費電流値がその実力を示してます。
そして新しいリチウムイオンバッテリーシステム、Core。
この商品のメリットは、リチウムイオンならではの容量はもちろんのこと、明るさを自由にカスタマイズすることができるという点でしょう。ヘッドランプとしては面白い機能です。
まずは物理的な面から。
Coreは、ランプ本体と裏蓋の間に挟み込むようにして装着します。このため全体の大きさは8mmほど大きくなってしまいます。しかし、重さはCoreが約30g、単四電池だと3本で約35gなので、若干軽くなります。単四電池との併用はできませんが、Coreを外して単四を入れる事はもちろん可能なので、まずはCoreを使用、容量を使い果たしたら予備の単四と交換という使い方はもちろん可能です。
充電はmicroUSB端子から。PCをはじめてとして、数あるUSB出力対応のACアダプター等から充電することができます。しかし充電しながら(USB端子に電源を接続した状態で)点灯させることはできません。もしこれができれば外部電源を利用した長時間点灯が可能になったと思うのですが残念。昼に充電しておいて…という運用でしょうか。
容量は約3.3Wh。単四エネループの場合は750mAh×1.2V×3本=約2.6Whなので充電式としてはさすがリチウムイオン。しかし通常の単四アルカリであればもう少し容量がありそうです。実際、説明書を見ると、それぞれの電池で時間ごとの照射距離は以下のとおり(ともにMaxモード)。
時間 | アルカリ | Core |
---|---|---|
0h | 60m | 46m |
0h30m | 38m | 40m |
10h | 18m | 14m |
30h | 6m | 0m |
これは電池の特性そのものという感じ。使用時間(2メートルの距離で0.25lxになる時間)が、アルカリだと80h、Coreだと13hなので、この数字だけを見ればアルカリのほうがずっと良さそうに見えます。Coreは10時間を過ぎたあたりからストンと落ち、アルカリはしばらく暗い状態で粘る…という事でしょう。
なお、この表の照射距離は「0.25lxの明るさ(満月の月明かり程度)」であって、例えば10時間後でも18m先を充分明るく照らせるという事ではありません。Ecoモードでの初期が17mなので、Maxモードで10h経過後は「手元を照らせる程度」と思ったほうが良いという事でしょう。
そのCoreを細かくカスタマイズするソフトが OS by Petzl。PETZLのサイトよりフリーでダウンロードできます。Adobe Airベースのアプリで機能の割にサイズがかなり大きいですが、動画を駆使した説明で、とてもわかりやすく出来ています。
ソフトをインストールし、USBケーブルでCoreとPCを接続すると自動的にアプリケーションが起動します(Macにて確認。PCでは未確認)。まずはCoreの登録。使用しているCoreに名前をつけ、どのモデルに使用しているかを登録します。つまり、単純にCoreを設定するだけでなく、複数のCoreを「管理」することができるようです。もちろんこの設定は後から自由に変更できます。
その後は、Max、Ecoそれぞれのモードにて、ReguratedかNon-Reguratedか、Reguratedの場合はその出力を調整できます。Maxの場合は100〜4%、Ecoの場合は12.5〜2%の範囲です。必要な明るさと使用時間を考慮しながら、使用するシチュエーションにおける最適なバランスを設定できるというわけです。
なお、基本的にCore無しの場合の明るさを越えることはできません。例えばEcoモード時の明るさを、Core無しでのEcoモードよりも使用時間が短くなってもいいからもう少し明るくしたい…という事はできません。
調整時、実際にランプを点灯させてテストすることができます。テストしながら好みの明るさに調整することも可能です。
面白いのが、設定した明るさは電源ONから3秒後に反映されるという事です。まず最大の明るさで点灯し、そして3秒後、設定した明るさまで少しずつ落ちます。このため、暗めに設定していた場合でも、一旦電源OFF→ONと操作すれば、3秒だけ最大の明るさで照射することができます。
設定した情報はPC内に保存することができます。例えば「小屋泊まり用」「テント泊用」など、使用するシチュエーションに応じた設定を保存しておくことができます。
やはり、Coreならではの使い方がReguratedモードでしょう。パワーをいろいろ変化させた時に明るさがどのくらい変わるかを測定してみました。バッテリーはフルチャージ状態です。上記XPとの比較と同様、拡散フィルターを使用して30センチ離れた場所での測定ですが、上記XPと比較した時とは微妙に条件が違うので(微妙に距離が違うだけで明るさは大きく変化する)上記の乾電池の場合との比較は参考程度にしてください。
モード&出力 | 使用時間 | 明るさ |
---|---|---|
MAX Unreg | - | 540lx |
MAX 100% | 4h30m | 570lx |
MAX 80% | 5h40m | 460lx |
MAX 60% | 7h45m | 350lx |
MAX 40% | 12h05m | 240lx |
MAX 20% | 23h30m | 120lx |
Eco Unreg | - | 70lx |
Eco 12.5% | 35h | 74lx |
Eco 10% | 45h | 60lx |
Eco 7.5% | 55h | 46lx |
Eco 5% | 74h | 32lx |
Eco 2% | 145h | 14lx |
それぞれReguratedモードで最大にするとUnreguratedモードと同様の明るさになりました。
また、MAXモードの40%でXPのHighモードとほぼ同じ明るさです。もし徹夜で一晩歩くとなると12時間くらいは点灯してほしいものですが、40%なら12時間使えますから、これなら安心して使えそうです。夜間に行動しないなら、Ecoモードを12.5%に、MAXモードを(宿泊数に応じて)100%〜60%といったところでしょうか。消灯時刻まで照明のある小屋泊まりであれば100%かな。もちろん、万一の為に予備の単四電池は持って行きましょう。
なお、点滅モードの時は、この設定に関係なく最大の輝度でフラッシュするようです。
小型、バッテリーケース一体型のヘッドランプの中では高輝度、高効率であるとともに、Coreによって「高性能」を付加させることもできるようになりました。なかなか頼もしいヘッドランプです。XPの明るさに少しでも不満を持っているとすれば、XPから買い替える価値は充分にあるでしょう。
欲を言えば、Coreの設定をアウトドアでも変更できれば…なんて思ってしまいます。PCだけでなくスマートフォンから変更できれば便利だと思うのですが。どうでしょうかね。